白
「好きなものがあって羨ましい」と言われたことは一度じゃなかったので、自分にとって苦労して獲得したものではなかったけれど自分はラッキーなのかもしれない。そのくらいのぼんやりとした輪郭でその言葉を受けてきた。また、目の前の人にだって好きなものはあるだろうにまるでないかのように言うのが不思議だった。
より正確に話せば、私は昔から好きなものがはっきりしていると言うよりも嫌いなものがはっきりしていたのだと思う。その結果気に入っているものが好きなものとして際立って見えていた……。私にとってというよりは、おそらく外側にいる人たちから見たときに。