「フィン・ユールとデンマークの椅子」展

「フィン・ユールとデンマークの椅子」展

フィン・ユールを中心にデンマーク発の有名な椅子を堪能できる展示が10月9日(日)まで東京都美術館で開催されている。

北欧のインテリアは常に憧れの的だ。家具だけでなく、照明、テキスタイル、食器、ガラス、シルバージュエリー、雑貨…….暮らしや装いに纏わるあらゆる造形、その素材、使い心地に北欧のセンスが光る。木材を愛し重んじるスタイルは日本の暮らしとも呼応する。

椅子のデザインだけでもこれだけの展示になるわけで、改めて椅子の造形や素材は奥が深いもの。生活様式の変化や工業化によってその形はさまざまに変容し、試行錯誤を重ねてきた。アルネ・ヤコブセンやハンス・ウェグナー、ポール・ケアホルムなどの代表的な椅子が並ぶなか、ひときわフィン・ユールの椅子は美しいと思う。美しくて楽しい。

一瞬、粘土か陶土のようなもので造形したのかな?と思ってしまうような木材の柔らかな膨らみ。座っていない状態でも椅子単体で重みを優しく受け止めているかのように見えるので不思議。空間にあるだけで人がそこで安らぐ様子を思い浮かべることができる柔らかさ。

色づかいも天才的。木部の色自体どれもしっとりとして素敵なのだけど、ファブリックや革の色づかいは飛び抜けている。特にフィン・ユールの色調の柔らかさに対する繊細な視線にうっとりしてしまう。

岐阜県高山市にあるフィン・ユール自邸を再現した「Finn Juhl Art Museum Club」にて2018年撮影
同上
同上

フィン・ユールの色彩感覚は今回展示されている椅子の図面でも堪能できる。図面というのにはあまりに美しく、デザインされたポスターのよう。彩色は水彩でされていて、椅子に落ちる影も表現されているところが格好いい。

デンマークにある自邸を再現した「Finn Juhl Art Museum Club」(岐阜県・高山市)では光あふれる居間を黄色や青をアクセントに、リビングは柔らかな緑色をアクセントに、ある部屋では天井に茶色のアクセントをもってくるなど素敵な驚きもあった。こんな天井、ぜひ真似してみたい!木の家具とは好相性だろう。

今回の展示では最後の展示室で実際に展示されていた一部の椅子と同型のものに座ることができる。どれだけじっと眺めていてもわからないのは座り心地……。じっと見つめるだけだった椅子たちに触ることができるので喜び一入。肘掛けの位置や触り心地、背中の安まり方、どんなシーンで使われるかを実感できるのは楽しい。

特に座り心地が気になっていた「チーフテンチェア」。とても大きいのでただ座るだけだと落ち着かなそうだし、どんなもんだろう……と座ってみるとやっぱりしっくりくるポイントが見つからない。フィン・ユールの自邸にもあったそうだけど、と思っていたら会場に展示されていた彼のポートレートにこの椅子を見つけた。

https://www.mcmdaily.com/finn-juhl/ より

こうやって座るのが正解?!

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